
10月に1960年松竹映画「東京ナイトクラブ」のなかで、フランク永井と松尾和子の歌唱映像が残されていることを紹介しました。
レコードが発売されたのは前年なので、フランク永井も松尾和子もフレッシュそのもの。記録としてもカラー映像できわめて貴重と言わざるを得ません。
ただ、お聴きになれば分かるのですが、音入れが大変よくない。映画フィルムの方はたぶん大丈夫とは思いますが、フランク永井のも松尾和子のも、ちょっと別人かと感じたほどよくないのです。しばらく聞いていると確かに、原音は二人のものだとわかるのですが、ここは残念です。
松竹のこの映画は、BS松竹東急でもいまだ放映されたと聞きませんが、是非とも流して欲しいものです。
フランク永井が「東京ナイト・クラブ」を歌った映像はおよそ20本残されています。1978年に所属事務所であるビクターから「魅惑のゴールデン・デュエット」という映像作品(VHS)が発売されました。
これはまさに、東京ナイトクラブを舞台にして、本格的に録画された映像です。最初に「東京ナイト・クラブ」があります。二人のデュエット映像が12曲あり、フランク永井の「おまえに」が収められた、52分の作品です。
これは、2009年「フランク永井のすべて」で、5本収録版で再販されています。
テレビ出演時に何人かの女性歌手とデュエットしています。八代亜紀、島倉千代子、生田悦子、岩崎宏美、青江三奈といった面々です。
青江三奈は独唱版をおさめたアルバムもあります。八代亜紀は石原裕次郎と「東京ナイト・クラブ」を正式にリリースしています。八代は現役歌手だけあって、今までに幾人かとこの曲のデュエットを残しています。山川豊、藤田まことなどです。
他の歌手による「東京ナイト・クラブ」のデュエット映像は、およそ30本残されています。聴いてみて、比較的安定的に聴けるのは里見浩太朗と都はるみです。
「ビタミンボイス」を自称する三山ひろしですが、彼ののどは確かにいい声です。彼は、長山洋子、水森かおり、松前ひろ子とのデュエット映像が残されています。
松前との映像は昨年暮れの「年忘れにっぽんの歌」でのものですが、お聴きになった方の感想はいかがですか。
これは変でしたね。それは松前の「こぶし」です。三山もそれに引きづられてか、こぶしの気をやや感じてしまいます。
恩師吉田正とのコンビで開拓した「都会はムード歌謡」は、演歌調をを消した、限りなく感じさせない歌の調子が特徴です。それをフランク永井や松尾和子がうまく表現しました。
だから、フランク永井や松尾和子については歌のジャンルとして「演歌」にははいらなかったのです。だが、近年の歌謡曲の分類分けは微妙です。都会派ムード歌謡が、独立したジャンルを保持できるには、やや弱いのと、この分野での若手がいないのが理由のようです。
若手に都会的な声を出せる歌手はいると思うのですが、残念ながら現代の若者をうなずかせる作詞家と作曲家の層が少なくなったからでしょうか。
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