
「有楽町で逢いましょう」はフランク永井を全国的な歌手に押しあげた曲として、フランク永井を語るときに欠かせません。この歌は多くの歌手によってカバーされていますが、今回はギター演歌手、流しの演歌師渥美二郎のを紹介します。
2001(H13)年5月にNHK『BS日本のうた』で歌ったものです。3番まできっちり歌っているのですが、さすがといっていい歌唱に感心します。
流しを経験して人気歌手になったこと自身が、歌唱の良さは証明されているのですが、素晴らしい歌唱を楽しめます。渥美はこの曲は好きで、リクエストされたときはもちろんだが、機会があればよく歌っていたといわれています。
渥美の最大のヒット曲は「夢追い酒」。この曲はフランク永井がカバーしています。1979(S54)「お前がいいというのなら」(SJX-20146)で収録されました。
ちなみにこの盤には同名のフランク永井の曲の他に「すきま風」「北国の春」「抱擁」「みちづれ」「季節の中で」「青葉城恋唄」「夢去りし街角」「男のポケット」「酒と泪と男と女」「いい日旅立ち」と当時のヒット曲が収められているのですが、いずれも絶品です。
現在思案中の「フランク永井トップ100(仮称)」に「すきま風」「みちづれ」は欠かせないのではと思っています。
さて、渥美二郎ですが彼の歌唱の実力は、ここで証明されているというのを感じたのは、1988年1月に中野サンプラザ・ホールで開催された「演歌道20年渥美二郎コンサート」ライブです。
2時間余りのライブで、彼は100数十曲を披露しています。戦前、戦中、戦後のヒット曲を歌って、その後自分のオリジナル曲を歌いまくります。すざまじい迫力が伝わります。
自ら演歌師と名乗るほどです。フランク永井のカバーと多くが重なりますが、フランク永井はいわゆる「演歌」の匂いをほぼゼロで歌いますが、渥美は逆にその匂いが100パーセントです。
流しは日本のあらゆる分野の曲を数千(少なくとも2000程度)はメロディーと歌詞を頭に入れています。これ自身驚異ですが、客(オーディアンス)に「聴かせる」というのは、別の能力です。
メロディーの一小節ごとにさまざまなニュアンスの「味」を用意しています。メリハリ、活舌、抑揚、こぶし、リズムを爆ぜさせます。
渥美は病気を経験していますが、歌手生活20周年のこの時期は、声が満開の時です。ライブでの弾む歌唱は彼の並々ならぬうまさを感じます。