「長編歌謡組曲」と「長編歌謡浪曲」など

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 最近テレビの歌番組にあまり強い欲求をもてなく、録画したままのが多い気がします。それらを観ていて、安心して見る気になったのは昨年3月の再放送でしたが、テレビ東京BSの「昭和歌謡ライバル物語古賀政男小関裕而江口夜詩」です。
 日本の戦中から戦後の昭和歌謡時代の流れを築いた偉人です。この三人には強い共通性がありますが、ビクター側のフランク永井の恩師吉田正を、本来は加えるべきでしょう。
 この番組で取り上げた江口夜詩については、テレビ番組として本格的に紹介したのは初めてではないでしょうか。優れた番組でした。
 それから、これは過去に何回も紹介したものと類似になりますが、三波春夫の後継を紹介したような、BS-TBS「徳光和夫の名曲にっぽん<名曲選スペシャル>」です。
 5月23日にも予定されています。
 三波春夫という一世を風靡した名歌手の残した歌と映像、特に彼自身が分野を切り開いた「長編歌謡浪曲」について、司会の徳光は必ず取り上げています。
 徳光はフランク永井の大ファンで、機会があると彼自身が歌いもします。彼はここ数年の流れを見ると、三波春夫への深い関心を寄せています。特に、第七世代(よくわからない)といわれる若手歌手が、三波のこの「長編歌謡浪曲」に挑戦して頑張っているのを紹介しています。
 三山ひろし、山内惠介、市川由紀乃、辰巳ゆうと、椎名佐千子、坂本冬美、彩青、中村美津子といった歌手がいます。浪曲は今では芸能の世界では人気を失った状態ですが、その大御所に二葉百合子がいます。彼女の弟子に浪曲の発生を指導していて、その弟子らが機会があると、歌謡浪曲を披露します。
 双葉は現役は引退しましたが、発声練習は毎日日課にしていて、引退後も「岸壁の母」は幾度か披露しています。
 彩青は細川たかしの弟子で、民謡、三味線を得意とします。歌唱法は細川にそっくりですが、民謡の発生を基礎として学んだ人ののどは、浪曲を学んだ人と同様の強靭さと節回し(こぶし)があります。
 若手が歌う歌謡浪曲は、やや大人の安定感には不安が伴いますが、なかなかしっかりと、若者らしくのびのびと歌っているのが、気持ちよく聞こえます。
 歌謡曲的な歌、登場人物の声色でのセリフまわし、そして浪曲とをつないで、およそ15~20分をこなします。相当な練習があってのものです。精神を統一して、全編をしっかりイメージトレーニングして、掌握してかからないとできる仕業ではありません。
 15分から20分と言えば、どうしても念頭に浮かぶのは、フランク永井の長編歌謡組曲「慕情」です。
 これも幾度か紹介していますが、1965(S40)歌手生活十周年を記念して開いた第2回リサイタルのメイン・ディッシュです。恩師吉田が、精魂傾けて作曲した異例の曲です。第20回芸術祭芸能奨励賞に輝きました。
 「慕情~歌とともに10年第2回リサイタル」というLPに収録されました。
 三波春夫が長編歌謡浪曲を作って、世を驚かしましたが、恩師吉田正はこれを歌謡曲の世界で成し遂げられないかと挑戦したものです。
 一方は、世間が誰でも知る文学作品から構成されているがゆえに、展開がオーディアンスに聴いていてわかる。それに対して、フランク永井が歌うテーマは、妻子ある男の浮気、子持ちの人妻への片思いということから、歌唱より設定にやや無理がありました。
 恩師吉田は盟友である鶴田浩二にも、長編を提供しています。だが、これで一時的に話題にはなっても、長編歌謡組曲として定着することはありませんでした。
 ただ、フランク永井が、ただならぬ歌唱の持ち主であることは認識されました。これは「慕情」をいちどでも聴けば、だれでもうなずけます。レコードには残されましたが、フランク永井の舞台で、リサイタル以外で「慕情」が歌われることはなかったのは残念です。
 吉田正の後年になって、吉田はささきいさおに「雪の慕情」という普通の歌に「慕情」から切り取って歌わせました。
 この「長編」を話題にすると、連想されるのが2つあります。
 ひとつは、1969S(44)に発売された「旅情」です。当時人気絶頂の橋本淳の歌詞に筒美京平が曲をつけた「組曲」です。これも芸術祭参加作品になっています。
 妻をもつ記者が欧州に取材の旅をしながら、浮気しているのか遠い日本にいる女性に思いをはせるものです。
 これの盤もフランク永井の流行歌とは異なる歌唱が全編を覆っています。ぜひとも機会があれば聴いてほしい盤です。
 もうひとつは、1976(S51)年催された歌手生活21年のリサイタルです。ここで33曲メドレーを歌っています。
 当時、北島三郎とか五木ひろしといった、流しの経験者は、数千曲を覚えていて、リクエストに必ず応えます。その優れた能力を生かして、自分の舞台で30~50曲程度を、連続で披露して、客を喜ばせました。
 フランク永井のリサイタルでの挑戦はそれにならったものと思われます。この長編は楽団泣かせでもありますが、これをやってのける歌手の実力は評価すべきです。
 ということで、話題が転々としましたが、昨今の「長編歌謡浪曲」は、歌謡界に何か新たなアイデアが生まれるきっかけになって欲しいと期待します。

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このページは、文四郎が2022年5月16日 15:26に書いたブログ記事です。

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