
ふとテレビに目をやったら、若い人の言葉についての認知度というのをやっていました。「mixi」については何と、10余%程度。驚きました。すでに、多くはFacebookとかTwitterやYoutubeに発信者が移ってしまったのですね。私にもそちらに移ったらという声が頻繁に入ります。だけど、あっちの騒がしさにはどうもついていけそうになく、こちらで頑張ります。
テレビの歌謡番組を私なりにウォッチしていますが、当然のごとく、フランク永井関係の番組はないのですが、頭のリフレッシュにはそれなりに効果があるのではないかと思っています。先日目についたのは、BSテレ東の「とにかく歌詞がすごい名曲スペシャル」です。
前川清、島崎和歌子がMCを務め、貴重な映像を流すのですが、何人かのゲストも時々登場します。気に入ったのは全体が落ち着いていて、しかも映像については、歌のブチ切りでなく、ちゃんと最後まで流してくれる点です。
パート2では、80年代がテーマでした。いい歌が多かったですね。
さて、歌手になって20年、1975年に発売された「魅惑の低音・フランク永井大全集」での、著名人・評論家による、フランク永井についての称賛の4回目を紹介します。
■わが友フランク永井その人柄(佐藤泉)
フランク永井はニコニコしていた。
三波春夫がニコニコしていた。
ホープ歌手同士、新聞での対談だった。
取材に当たったわたしが、そのとき、どんな顔つきをしていたかは知らない。
だが、出来上った記事はニコニコしていた。
「正月原稿らしくていいさ」
デスクはこともなげにシャレのめしたものだった。
二十年経った。フランクはニコニコしている。ナガイ付き合いの筈なのに、十年一昔どころか、二十年一刻の感である。
十九年経っていた。「お久しぶり」。三波春夫は周囲を払ってカンロクであった。
ニコニコまではいかず、半分の〝ニコ〟だった。こちらが.神サマではないせいだったのだろうか。
両人とも日本を代表する立派な大衆の歌手である。
フランク永井は酒をのんでいた。
ホテルのバーである。わたしを含めて四人だった。
そこへ一人の知人がやって来た。ある芸能誌の幹部氏である。かなり酔っていた。そして、突然の放言だった。これには、
オヨヨ......。
われわれは、こんな感じだった。
これがお気に召さなかったのか、ついに酔漢氏は声高に猛り始めた。座はシラけた。
「悪酔いしているな、テキは......」
さわらぬカミにたたりなし。このカミはアルコールに呑まれた神サマなのである。
われわれは平均的日本人の中年男性集団であった。
「まあまあ......」
これがいけない。テキは悪乗りし、ついにツノの生えた悪神に成り上が(?)った。
ニコニコがニコになり、それも消えたフランクは口を切った。
「一緒にお飲みになりませんか」
「おかしくって飲めるかッ!」
話にならないのである。
そのうちに仲間の一人の個人攻撃(のつもりだったのだろう)をロぎたなくやらかす始末。
「ちょっと、あちらへ行きませんか、みなさんの迷惑だから......」
静かな低音である。
虚を突かれた酔漢氏、もはや明らかにツノは無用の長物と化してしまった。
こちら酒席をつとめて三十年。対してその半分に近い十数年のキャリアのフランクであった。
「なんとも不愉快なことで......」
神サマ退散のあと、ポッリと言って心もち頭を下げられたとき、こちら、そろって顔が赤かったのもアルコールのせいではなかった。
フランクが酒をおぼえたのは三十歳ごろである。
飲めなくて飲まなかったのではない。間(ま)をもたせるためにはじめたのでもない。
酒を飲んでも分別をつけられる年になったから、おぼえたのである。
酒量はブランデーでボトル一本。
酒席でのフランクが好まないタイプがある。いくら飲んでもシャンとして平然を装うの類(たぐい)だ。
「酔わない酒はケシカランですよ。ただ強いというだけでしょ。イヤですね、そんなの下の下ですよ」
アルコール哲学なのである。
飲むほどに酔うほどに多々ますます弁ず......話題も豊かで「ト音記号」から「ヘ音記号」までと、その内容も〝高低″の振幅が広い。
「なんというか、和チン(松尾和子)なんぞいい酒ですね」
後輩に対しても正直に尊敬してしまう、これまたケッコウな酒好き・フランク。
かつて和服のモデルもやっていた。
「オヨヨ......」
またぞろ、オヨヨで気がひけるが、このコト、あまり知られていない。外出時にはほとんど着用しないが、家庭にあってはチョクチョク......。
何年か前にNHKテレビで落語を一席、このときの和服姿なんざァ、噺(はなし)とともに、どうしてなかなか堂に入っていた。
故人の三笑亭可楽とはファン同士で仲がよかったが、これを知った桂文楽(故人)が
「あァた、いいお友達のひとり占めはいけませんナ」と、可楽に〝抗議〟したなんざァ、こんち、懐しくも嬉しいオハナシ。
フランク宅へ電話をかけると、いきなり高座の出囃子が聞こえて「えー、こんち、ちょいと外に出ております。御用の向きは録音テープが承りますので......」
と、フランク亭永井の、丁重且つソフトボイスの〝応待〟である。
芸名はパタくさいが、その実像、平均以上の日本人らしい日本人、とでも申そうか......。
歌手の条件。歌は別にして、①頭がいい ②カンがいい ③客の心をすぐつかむ ④ち密な計算 ⑤周囲にすぐとけこめる。わたしなりに、こう思っている。
二十年間のフランク永井は、こんな条件を具備してきた。
そして人知れず書を読み、多くの人間に接し、生きるために努力してきた。自己を向上させようとつとめつづけてきた。
コメントする