
最初に:多くの方から、記事へのコメントや、メール、賀状での新年のご挨拶をいただきました。大変ありがとうございます。ことしもよろしくお願いします。この間私事で身と手が離せなくて、返事もできませんでした。大変失礼いたしました。お詫びいたします。
「恋人よわれに帰れ」は、言わずと知れたフランク永井のデビューを記念したレコードです。当然ですが、米国の大ヒットを遂げたポピュラーのカバーです。
このレコードはSP盤で、ジャケットに見るようにA面は、当時ビクターが売り込もうとしていた羽生奈々子の「時計のまわりを踊ろう」で、これも大ヒットのカバーです。
無名の新人同士の曲で売れませんでした。羽生奈々子については、その後も名を聞いたことがないので、この一曲だけだったのでしょうか。
この曲は有名ゆえに日本でも多くの方が歌っていて、私が「フランク永井の...」と強調しても、なかなかうなずいていただけないのが、少しばかり悔しいところです。
フランク永井をジャズ歌手から流行歌への転向を後押ししたのが、先輩のディックミネです。戦前から戦後を渡り歩いた大歌手です。彼が昭和10年に戦中なので本名の三根徳一で、自ら訳詞をつけ編曲してレコードにしています。
〽今は淋しく 君は去りて/忘れられない あの面影...
最近のカバーでは私の耳に心地よいのは、秋元順子のものです。彼女の歌唱は好みもあるでしょうが抜群です。以前に「君恋し」で紹介しました。
3年前のアルバム「Flowers~AJセレクション~」に収められた一曲です。
これだけ一世紀にも及ぶかという人気曲(1928初リリース)というのは、多数の映画にもなっています。
最近に観たのは日本製のものです。大林宣彦監督、1983年の作品です。フジテレビ、テレパック制作のカラー、およそ1時間半のものです。
注目したのはスタッフでした。
早坂暁脚本で、音楽は前田憲男。出演が沢田研二、トロイ・ドナヒュー、小川真由美、大竹しのぶ、泉谷しげる、風吹ジュン、垂水悟郎、待田京介とあるではないですか。これは観なきゃ、と思った次第です。
そうそうたる名の中に、なんと当時米国俳優で最大の美男子などとも言われた(私が知るだけかもしれないが、確かに聴いた)トロイ・ドナヒューまで出ていると知って、まさかと思ったほどです。
内容は一言で言えば大林、早坂両氏が追及していいた戦争悲劇に尽きます。政治的で、かつ朝鮮戦争、在日朝鮮人、在日進駐軍、広島への核爆弾の投下、家族、恋人の引き裂かれ...という実に深く、思いテーマを描いています。
作品的には映像のリアルさはなく、資金の問題とも言えない誰が見ても分かる粗雑なセットと、短い時間なためか相当強引で不自然なシーンの移行が、かえって主張のポイントを分かりやすくしているという、微妙な作品でした。
大胆な切り口ですね。映画が作られてから、わずか40年程度しか経過していないのですが、社会は何か日本的「ポリティカル・コレクトネス」のせいか、恐らく再上映ははばかられているのと思いました。
このブログで何度かフランク永井関係映画を紹介してきました。そこで触れたように、タバコをブカブカ、ピストルをバンバン、さまざまなセルフ回しが、どのように画面に警告表示をしても、現在の社会的には取り扱うには抵抗がある(放送コード)ので、気楽に楽しめないのが残念です。
社会的風潮の変遷は自然で当然だと思うのですが、それを推薦はしないまでも、自分も含めた社会が現実に当時に作ったものを、記録として、自由に、妙な規制をせずに観られるのが望ましいと思いました。
そして、観て、それをどう受け取るのかは、純粋に各自の自由なわけですから。
つい、重く、暗い話になってしまいましたが、いつものことでお許しください。
この映画のなかで、くどいほど主演でもある沢田研二が「恋人よわれに帰れ」を歌っています。その一回でもいいから、フランク永井登場であってもよかったなか、などともつらつら思いながらの鑑賞でした。
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