
四年前に青江三奈がカバーした「夜霧の第二国道」を紹介しました。「ビクター流行歌名盤・貴重盤コレクション」デジタル復刻シリーズの「グッド・ナイト」の一曲です。フランク永井の恩師吉田正作品でもあることから、まずとりあげさせていただいたものでした。
そのときも触れたのですが、青江三奈の「お富さん」も復刻されています。この覆刻CDは手元にないのですが、LPで楽しんでいます。この作品は作曲家渡久地政信作品でできています。
フランク永井に「夜霧に消えたチャコ」「俺は淋しいんだ」や多数の曲を提供していただいています。青江三奈は「お富さん」で、この2曲を歌っています。
「お富さん」はご存知のようにキングレコードに渡久地が在籍中に春日八郎に提供した曲です。私などもその爆発的な人気を知っています。ラジオで毎日流れ、誰もが「〽いきな黒塀、見越しの松に...」口ずさみました。子供はよく親から怒られたものです。
渡久地は古巣のビクターに戻って更なる活躍をみますが、そこで大ヒットをはなったひとつが、「池袋ブルース」で名をはせていた青江三奈の「長崎ブルース」です。
当時は、青江とほぼ同期でデビューしていていた森進一とあわせて、今や死語でしょうが「ためいき路線」などと呼ばれていました。
青江といえば、私などの印象では、とにかく繁華街で気ばいキャバレーの女といったものでした。独特な雰囲気を発散していて、歓楽街で酒とたばこによって枯らされたと思える、じゃ枯れ声と見つめる目が、何とも「ガキなど寄るな」という感じでした(失礼をお許しください)。もちろん、これはレコード会社の用意した作り上げたキャラで、ご本人の個性とは言えないものです。
青江は、同僚の松尾和子や日吉ミミなどと似て、実際にはさっぱりした、気前のいい性格で親しまれていたようです。だけど悲しいことにこの方がた若くして世を去ったのが、心残りです。
このような青江三奈をなめちゃいけないのは、確かな歌唱力なんですね。プロなんだから当たり前だろうということではなく、ハスキーな声に惑わされずに良く聴けばわかるのですが、低音から高い音まで音程が抜群なうえに、歌詞をよく気持ちに乗せて歌っています。
けっして、どんな時でも、どんなステージでもあいまいに歌ってごまかすようなことはしていません。
ちょっと横にそれたようですが、この盤で歌っている曲を聴くとよくわかります。
カバーを歌うの聴いてあきないような歌手は、唄がうまいです。歌は詞がありメロディーがあり、歌手が表現します。曲がその時代とマッチし、条件がそろうときにファンがつき、爆発的なヒットにつながります。一つでも条件がかけると、大歌手でも視聴者はうけいれません。だから、他の歌手のヒット曲を、別の歌手が歌うということは、歌い手という点で、過去のヒット条件をくずすために、聴かせるのは難しいのです。
歌手がカバーに挑戦するには、それだけの覚悟と、その歌手と曲を貶めてしまうことがないか、という怖れを胸に抱えて挑戦します。
私はフランク永井の追跡者なので、どうしても彼の曲をどう歌うのかというところに関心がいきます。2曲は編曲名人の寺岡真三作品です。なかなか聴かせるではないですか。
この盤では渡久地作曲の「池袋の夜」「長崎ブルース」が入っていますが、他はすべて他の歌手のヒット作品です。
お富さん(春日八郎)
夜霧に消えたチャコ
上海帰りのリル(津村謙)
踊子(三浦洸一)
俺は淋しいんだ
池袋の夜
島のブルース(三沢あけみ)
東京アンナ(大津美子)
お百度こいさん(和田弘とマヒナ・スターズ)
東京の椿姫(津村謙)
背広姿の渡り鳥(佐川ミツオ)
長崎ブルース
すべてが渡久地作品というだけあって、炎のように熱い作曲家渡久地の作り出す味が十分に味わえる作品集となっています。
三浦洸一の「踊子」とか佐川ミツオの「背広姿の渡り鳥」などは、青江なりの解釈というか入れ込みがよく伝わる曲です。
青江とフランク永井はどのように舞台で共演したのかはあまり知りませんが、一度だけNHKビッグショーで1974年4月28日「フランク永井・青江三奈 おとなの子守唄」を放送しています。これは残念ながら映像が残されていないようです。
「東京ナイト・クラブ」をデュエットしているのが残されています。青江はこの曲を単独で歌ってもいます。フランク永井は青江のヒット曲「伊勢佐木町ブルース」をカバーしています。
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