フランク永井の先輩鶴田浩二のNHKビッグショー「男の詩」で長編歌謡組曲

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 親しい友人の紹介とお誘いで、鶴田浩二が1976年にNHKビッグショーに出演した映像記録を鑑賞しました。
 このショーの模様は翌年にLPになって発売されました(SJX-10188)。これは私も所有していて大事にしまい過ぎて、当時一度聴いたきりで詳細はすっかり忘れていました。
 映像は残っていないものと思っていたので、このたびじっくりと観てみて、さまざまな点で新発見といったところです。
 はっと思いだしたのはこの番組の後半は「名もない男の詩」という歌謡組曲だったことです。鶴田浩二は映画俳優で、この歌を歌った当時は若手人気のトップにおりました。その後、石原裕次郎が登場してすっかりその地位をもっていくわけですが、鶴田の人気はすごいものでした。
 鶴田は当時の例に漏れず、周囲からおだてられ、そそのかされて、歌を歌わされます。さすがに歴史に残る名優で、歌い手としてもなかなかの人気を博します。特にビクターの帝王である吉田正と知り合ってからは、次つぎと名曲を残していきました。白いハンカチでマイクを握り、片耳を手で覆って歌う姿は、後にも先にも鶴田だけです。

 吉田正はご存知のように、先の大戦ではシベリア抑留を経験し、過酷な環境の中で「異国の丘」を作っています。後の「寒い朝」も厳寒を織り込んだものと言われています。
 鶴田も海軍に召集され同期の友を失う経験をしています。そこからか吉田正とは意気投合して特別な信頼関係を気づいています。
 当時俳優の先頭に立つまでのいきさつや、鶴田の心情の変遷をテーマにして、吉田正作曲作品としてこの長編歌謡組曲「名もない男の詩」ができました。
 1969年に「名もない男の詩/鶴田浩二」(SJX-13)を発売しました。鶴田は1971年にリサイタルを開いています。ここで大観客を前に披露しました。これもLPで発売しています(SJV-554~5)。
 鶴田は俳優としては、戦争と任侠の印象が強い人でした。好き嫌いがはっきりしていて、仕事への異様なこだわりを持っていました。だが、残された音声だけではなく、こうして映像で見ると、そこにはひとりに人間としての姿があります。観ることで一人一人が、そこから判断できる人間が浮かび上がります。惜しくも、昭和の終りに彼も世を去りました。

 長編歌謡組曲といえば、フランク永井ファンは忘れもしません。フランク永井の第2回リサイタルを1966年に開いたときに、恩師吉田正が渾身込めて用意した「慕情」です。
 これは岩谷時子の詞で、若きフランク永井がろうろうと20分歌います。このときの歌唱は、会場厚生年金会館を埋め尽くした観衆を驚かせました。ただの歌い手ではない。半端な歌手ではない、という確信をもたせたものでした。
 このときの「慕情」の一節は、後にささきいさおが「雪の慕情」としてシングル発売をしています。

 映像でなければ発見できなかったものがありました。それは、編曲家寺岡真三の映像です。ご存知のように、寺岡を一躍有名にしたのはフランク永井が歌った「君恋し」の編曲です。
 私が「魅惑の低音フランク永井のすべて」というデータブックを編纂しているときに、どうしても寺岡の写真を使いたかったのです。当時はモノクロでぼんやりした写真しか表に出ていず、最終的には吉田事務所を通じて寺岡の遺族の方から貴重な写真を借り受けて、使用させていただきました。
 その寺岡が、鶴田浩二のこの番組で鶴田が思い入れの曲「男の夜曲」をピアノ演奏しています。感銘ものです。
 寺岡は編曲の名人です。この時期、ビクターの歌手の残した名曲の相当数を手掛けてきました。聞く人の耳に鮮やかな印象を残す編曲家。戦前から歌われていた「君恋し」をフランク永井に蘇らせた腕は寺岡ならではのものです。カバーを対象外にしている日本レコード大賞において、フランク永井がカバーした「君恋し」が、受賞したのは、それほどオリジナリティに飛んでいたからです。

 恩師吉田正は、この組曲をわざわざ指揮で登場しています。彼の独特な指揮の姿を久しぶりで観ました。全身を使ったタクトのサバキ、顔の表情は、完全にその曲に魂が入り込んでいるのが分かります。

 写真の真ん中の下は、NHKビッグショー「吉田正~異国の丘から30年」でマヒナスターズを後ろに、三人がそろったときのものです。

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このページは、文四郎が2020年10月 3日 16:43に書いたブログ記事です。

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