「日本の流行歌スターたち」がすでに26巻にも

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 「日本の流行歌スターたち」("Japanese Kayokyoku Star")については、たびたびこのコラムで紹介してきた。これはビクターに属した名だたる歌手について、ベスト22~24前後の代表曲を集めてシリーズでリリースしているもの。2年前からいくつかのくくりで出している大作で、現時点で26巻に及んでいる。まだ続く模様。
 第1巻に「フランク永井」が収まり「二人だけのワルツ」「さあもう一度キスしよう」「秋」が新たにデジタル化されたことに触れた。「さあ...」は埋もれていた貴重な初出の音源である。
 1:フランク永井、2:松尾和子、3:藤本二三代、4:榎本美佐江、5:神楽坂浮子、6:小唄勝太郎、7:佐藤千夜子、8:生田恵子、9:徳山漣、10:藤本二三吉、11:久慈あさみ、12:轟夕紀子、13:暁テル子、14:四谷文子、15:市丸、16:小林千代子、17;藤原義江、18:服部富子、19:宇都美清、20:初代鈴木正夫、21:平野愛子、22:乙羽信子、23:由利あけみ、24:久保幸江、25:藤原亮子、26:羽衣歌子
 男性歌手は5人と少ない。いかに女性歌手の人気があったかということだろう。戦前から昭和にかけてのそうそうたる陣営といえる。逆に現在の若い方々には名前すら知らない、知っていて歌は聴いたことがないというのが多いのではないだろうか。文四郎の年代でも相当に歌謡曲に若い時から関心を抱いていなければ、知らない人もいるはずだ。だが、ご存知の方であれば、よくぞまとめて出してくれたと、感涙するかもしれない。それほどの歴史的な大作品なのである。
 こうした歌手については、フランク永井や松尾和子といった突出した人気を博した、しかもこの陣営でも「若手」(えっ!だろうけど)には、すでに多くのベスト・セレクションや全集的なBOXものが出ているのだが、基本的にはいままで不識なことかもしれないが、出ていなかったのだ。だから、この度のシリーズではじめて選集としてまとまって出たというのがほとんどだ。
 それは、活躍のピークの時代がSPレコードの時代であったことが困難にしていた理由のひとつだ。また、その後に訪れるレコード会社や映画会社が作った専属性掟がある。レコード会社を移動することが厳しい競合社会で大きな壁ができていたために、権利許諾の難しさを生んだものと思える。
 かてて曲の歌詞にもこの時代の大衆感情が深く関与している。というより、阿久悠じゃないが時代の鏡のようなもの。この時代は戦争の影から逃れられない。映画のことで幾度もふれたように、タバコ、銃、薬が今ではありえない、あってはならない状態で不通に登場する。これは男が女に対する扱やふるまいでも同じだ。パワハラ、セクハラの概念もない。替え歌として歌詞を変えないでも、現代でははばかられることも出てくるからだ。
 そうすると、当時どれほど人気があったとはいえ、選曲は容易でない。だが、このあたりは、このシリーズの実現に大きく貢献した合田道人氏(以下敬称省略で失礼)に負うところが多いのだが、見事に対応しているところがすばらしい。彼は、ほとんどの巻について選曲し、歌手のそつない紹介を成している。
 CDを聴いて驚くはずだが、完全なノイズレスのクリアな、まるで古さを感じさせない音が楽しめる。今出た理由にはそうした権利や技術が背景にあるのだろう。
 大衆娯楽、大衆文化の遺産が埋もれたままでいいのか、という問題もあり、これはやはりビクターのようなレコード会社がやらなければ、いかんせん、やりようがない。しかもこの遺産を後世に引き継ぐという意義を理解したものにしかやりえない。だから、今回それを実現していることに敬意を感じるものである。
 多くの方の活躍されていた時期の最もハリのある魅力的な表情の写真で統一されている。モノクロで統一されているのは、時代を醸し出している。多くの方はおそらく、カラー写真はないのかもしれない。
 先にこのシリーズの紹介で美人歌手藤本二三代を取り上げた。レコード・ジャケットなどで、よくもここまで顔の表情の異なる写真を使ったものだ。現在の顔認識で同じ人は認識されないだろうと思うほどと書いた。個人的に美形で歌がうまいで好きなわけだが、このシリーズの5巻目の神楽坂浮子も同じく歌がうまい。
 それはCDを聴いてみればわかるが、彼女の歌う「祇園小唄」などを聴けば、けっしてお色気やムードだけで人気があったのではないと納得する。フランク永井とのカップリングが多いという紹介もしたが「ピンクムード音頭」が収録されている。
 また神楽坂浮子は橋幸夫同様古賀政男に歌の指導を受けていた。だが当時のレコード会社は「収益につながるか」が第一で、すでに神楽坂はん子や久保幸江という売れ子がいるのでもういいとして古賀はビクターに紹介した(選曲・監修した合田道人がインナー・ノートで紹介している)。ラジオ歌謡の鳴海日出夫についても、岡本敦郎は二人いらないと不遇の扱いのようになるのも同じだ。
 古賀の配慮はすごかった。ビクターで橋幸夫も神楽坂浮子も実力の花がビクターから咲いた。

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このページは、文四郎が2020年1月11日 18:16に書いたブログ記事です。

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