フランク永井恩師吉田正が作曲、阿久悠作詞「花蕾」を美空ひばりが歌ったできごと

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 「花蕾(はなつぼみ)」を美空ひばりが歌ったことが画期的というのは、その作曲をしたのが吉田正であったということ。当時コロンビアの看板歌手美空ひばりとビクターの専属作曲家吉田正は、レコード会社間での専属制という高い壁があることからコンビを組むことができないというのを乗り越えて実現したからだ。
 しかも作詞が「美空ひばりが歌っているような歌でない詞を書く」ということを掲げて、実際に人時代を作ってきた大作詞家であったことだ。
 ビクターとコロンビアはいずれも世界的をまたにかけてつば競り合いを繰り広げてきた、世界的なオーディオ・レコード会社が母体でできた。もちろん現在はいずれも日本の資本として名は保ちながらも最大大手のレコード会社である。国内でも当初から競いあってきた。だが、さすがに日本の文化と心情を反映して、戦後の物資難、あるいは戦火で失った工場などの時には、互いに資材を融通しあい、スタジオも使いあうという一面も歴史に残っている。
 レコード会社はその商売上避けられない性質を持っていて、競合から生じるトラブルとして歌手や作曲家という最大の資産を防衛するために、苦肉な策としての専属制を敷いてきた。同時に互いの企画を尊重し、歌手や作曲家のジョイントは不可能だった。クラウンがコロンビアからでたり、ミノルフォンができたりしたばかりか、資本関係が激しく変遷する。
 ビクターとコロンビアでは、吉田正と古賀政男については特別にその規制を境界していた。
 阿久悠とかなかにしれいとかニューミュージックの歌手や作家たちは、そうした旧体制にたいして反発して果敢な独自路線を切り開いてきた。時代の流れでやがて専属制の規制は薄められて今日に至っている。
 コロンビアは昭和50年、流行歌ができてから50年のような区切りに、日本の流行歌全体をカバーするような記念企画をする。もちろん大御所である美空が歌うのだ。このときに横断的にレコード会社や著名な作家に話を持ち掛ける。
 キングもテイチクもビクターも構想には賛同するものの完全一致までに至らず、それでもおのおのが独自に動き出す。こうした流れのなかで、美空が体調をくずして昭和62(1987)年に入院する。これに動揺したのはコロンビアばかりでない。美空は日本の大衆文化全体に影響をもつ人材。この機に流れが変わる。「ひばりはもう歌えないのでは」と心配されていのだた。
 阿久悠は美空にいくつかの詞を持ち込んでいた。それに美空本人の強い要望が加わって吉田正作曲が実現する。美空も吉田も互いを戦友として認識していた。同じ場で演じることはできずとも、心の中では互いに尊敬しあっていた。このときにコロンビアの提起にビクターも意義を唱えなかった。
 1988に吹き込みが実現した。「花蕾」と「人」(編曲は京建輔)。
 こうして実現したジョイント作品だが、これが注目をあびたのは、美空の最後のコンサートとして開催されたドームでの病気からの「復活」歌唱だ(H7:1995)。ここで「花蕾」が5万人聴衆に披露された。さらにこのときのビデオで広くさらされる。いい曲ではないかということで、リクエストにこたえる形で、いくつかの作品としてシングルなども再発売された。
 レコード会社の壁を越えた吉田正、美空ひばりという二人と阿久悠という偉大な作詞家の結合は実現した。だが、間もなく美空も、吉田も、阿久も去る。だが、この最初で最後の出会いは、彼らの周囲の多くの強い意志がスタッフと何よりもファンの夢であった。それを実らしたビクターとコロンビアにも賞賛の拍手を送らねばならない。
※「昭和の巨星スペシャル吉田正」の記事の中で紹介した「花蕾」が出た事情について、あらためて問われたのでまとめてみた。このことについては1997年にTOKYO FM出版から発売された「地球音楽ライブラリー 美空ひばり」にコロンビアサイドからの紹介がある。この書籍は森啓氏が監修した美空ひばりのデータブック。フランク永井のデータブック「魅惑の低音のすべて」と同様、美空ひばりが残したレコード・CDなどのデータをまとめたものである。

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このページは、文四郎が2017年12月 2日 09:28に書いたブログ記事です。

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