2016年5月アーカイブ

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 廃盤のレコードを発売時のジャケットとともにCDで復刻し、全国のレコード店で手にできるシステムを展開するMEG-CDから、5月23日にフランク永井のシングル盤14点が復刻された。これにより、ライブLPやカラオケ演奏などを含めて計210点が揃えられたことになる。
 MEG-CDが昭和歌謡の人気歌手の廃盤曲を精力的に復刻して、ファンの要望に応え続けているが、フランク永井については最大数を誇るものではないだろうか。フランク永井ファンにとってはたまらないほどの驚異的なご褒美である。
 フランク永井が残したシングルやLPは400枚近くになる。シングルはおよそ250枚ほどである。筆者のデータに照らしてみると、MEG-CDが実現した復刻はその大半に迫るものである。レコード盤からの復刻は当然だが、なまやさしいものではない。レコード会社からのオリジナル音源の提供をえられるものばかりとは限らないので、盤の記録音源からデジタル復刻することがある。フランク永井の場合は時代が古く、SPレコード時代からEPやLPに代わる時代であっただけに、盤からソースを起こすような作業をともなうことが多く、当然に多大な労をつくしても、結果ノイズや盤の劣化からリリースに至らないものの多くなる。そのような目に見えない技術陣の苦労が背後にある。ファンが軽く復刻を願っても、それが実現するまでにはそのような苦労があり、それを思えば、このたびのリリースはMEG-CDにたいして、大いにねぎらいと感謝をささげるものである。
 今回の曲では写真にあるように、左はフランク永井のEP化初期のレア品で、現在ではほとんど入手不可能なものばかりである。日本レコード大賞作詞賞の「月火水木金土日の歌」。「お尻を打つよ」はいずれも子供向けの服部公一作品。さらに「霧の東京五番街」などはファンにとっても幻のような作品だ。「追憶」はいままで何度か紹介しているが、SP版「追憶の女(おもいでのひと)」をヒットさせたいフランク永井がステレオ再吹込みして曲名を変えて実現したものだ。この曲名はこのときだけで、その後は元の「追憶の女」に戻っている。
 写真右のはずっと後半の作品である。今までの復刻で実現していなかった後半の盤を実現している。初版がSP盤であった「公園の手品師」が後年の成熟した声で再吹込みしてA面リリースしたもの。同様に「初恋の詩」と裏面の「わかれ」も。阿久悠が作詞し堺正章に提供した「街の灯り」のカバー。フランク永井の最後のシングルとなった「あなたのすべてを」などを含んでいる。

 フランク永井の残した曲は、デビューから60年を経て、ここ数年でほぼすべてとまではいわないが、圧倒的な数が急激にデジタル化された。2月の「懐かしのフランク永井 A面シングル全集」は画期的な商品で初期SP盤を含めて復刻している。今回のMEG-CDと合わせると、ファンの感慨はひとしおである。全国の根強いファンの思いがそうさせたものと思う。

 さて、別件であるが、ひさびさのテレビ番組です。この件についてはやはり熱心なファンが情報を寄せてくださったもので、大感謝である。下記、ぜひともご覧いただく思う。

あのスターにもう一度逢いたい
【放送局  BS11デジタル
【放送日時】2016年5月31日(火)20:00~21:00
【番組概要】「フランク永井・ムード歌謡で日本を酔わせた男」
【出演】  [ゲ]三田明 [ゲ]村松友視 [ゲ]谷田郷士 [司]宮本隆治 [司]高野萌
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 「昭和歌広場~SPレコードとトークでつづる歌謡史」の第8回が5月21日に東京・神田神保町のらくごカフェで開かれた。
 今回は「もはや戦後ではない頃の歌2」という特集。2というのは、第4回で1を開催されたようである。企画と主催は司会の林田雄一。解説は演芸評論家の保田武宏。そして当日に真打昇進をはたした林家たけ平が、さらに落語芸術協会内の懐メロファン代表・桂夏丸が多忙のなかにゲストとしてかけつけ出演という豪華。
 落語と歌謡は大衆芸として関係が密接で、昔から相互に深い理解と連携の歴史を持つ。戦後の歌謡公演の司会を落語界の関係者が多く普通であった。またフランク永井もフランク亭永井と自称したほどお噺にはのめりこんでいたものだ。
 解説の保田は読売新聞の芸能全般をカバーする記者であっただけに、綿密な取材と背景の追及を記録している。しかも当日「小畑実のレコードで言うなら百数十枚も所蔵している」というほど、膨大なSPレコードを実際に手にして確かめ、ご自身も歌って手ごたえをつかむ方。正確な歩く芸能データベースだ。フランク永井や林伊佐緒などをはじめ公私で深い交流を持ち、エピソードの宝庫をもつ。
 また、うれしいことに、歌を紹介しエピソードを語る面々が若い。単に若いだけではない。彼らは様々なところで、昭和歌謡、昭和の大歌手、SPレコードを現役で紹介に力をそそいでいる。口で紹介するのが仕事ということもあろうが、彼らの生まれる前に活躍した方々の時代背景、レコードと歌とそれらの企画と大衆の反応について、驚くような情報とうんちくをもっている。
 当日は、主催者がよりすぐった20曲が演奏された。昭和28~34年の発売。

  01 ふるさとの燈台(田畑義夫)
  02 ロンドンの街角で(小畑実)
  03 夢のフランク航路(岡晴夫)
  04 ブギ真室川音頭(林伊佐緒)
  05_岸壁の母(菊池章子)
  06_高原列車は行く(岡本敦郎)
  07 お富さん(春日八郎)
  08 ハンドル人生(若原一郎)
  09 月がとっても青いから(菅原都々子)
  10 リンゴ村から(三橋美智也)
  11_ここに幸あり(大津美子)
  12 どうせひろった恋だもの(コロンビア・ローズ)
  13 早く帰ってコ(青木光一)
  14 ジョッキで乾杯(曽根史郎)
  15 喜びも悲しみも幾年月(若山彰)
  16 こいさんのラブ・コール(フランク永井)
  17 釧路の駅でさようなら(三浦洸一)
  18 ら・あさくさ(美空ひばり)
  19 船方さんヨ(三波春夫)
  20 人情寄席(村田英雄)

 SPレコードであるということは、EPでもLPでもCDでもない。この時期はSP最後の時代で、その後すべてEPとLPへ移行する。あげた歌手は歌手としてもっとも張りがあり、美しい声を発していたときといってよい。
 これが会場ではオーディオ・コーディネータ高山承之が手作りのSP専用機材をつかって聞かせてくれた。SP音源は人間の発生器器官をもっとも忠実に再現した技術といわれているが、歌手の歌唱の良さを極限まで再現している。ノイズから逃れられないといわれるSPをソースにしていながら、それを感じさせないほどすばらしい歌手の歌声を会場いっぱいに響かせた。
 SPファンにとってはたまらない至福のときであった。
 待ちに待ったフランク永井の曲は「こいさんのラブ・コール」。これはフランク永井ファンならだれもが知っている名曲。1958(S33)年4月に呉羽紡績提供のABCホームソングで流されて大人気になり、7月にリリースされたもので、フランク永井のいわゆる関西モノのはしりだ。だが、この曲は先に皆が知っていたこともあるが、恩師吉田正のいわゆる吉田学校の先輩である三浦洸一の「釧路の駅でさようなら」(上記No17)をA面にして発売されたものだ。
 ちなみに、2月にビクターから発売された「懐かしのフランク永井~A面シングルコンプリート」(CD10枚+DVD1枚)には、例外で採用されている。なお、このCD-BOXには同様にB面でありながらも収められたのは「東京ナイト・クラブ」「俺は涙を知らない男」「悲しい人が去っていく」がある。ついでだが、正式にリリースされたシングルで、入らなかったものもある。「アイル・リメンバー・トゥナイト」「戦場の恋」「勇者のみ」(ただしこれはレーベルがリプリーズであるため。MEG-CDより復刻)。初版がB面だった「公園の手品師」は、1978年吹き込みのA面が入っている。「初恋の詩(うた)」は1962年の初版と再吹込みの1984年版の両方を聴くことができる。(敬称略させていただきました)

 下写真右は、2種類のフランク亭永井のれんをくぐるごきげんのフランク永井。

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(注:データブックの訂正 25頁写真上=下写真左「十代目金原亭馬生師匠と」に。写真下=下写真中「八代目文楽師匠と」に)
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 フランク永井のライブ作品はいくつか発売された。もっとも有名なのはリサイタルで、1968(S39)年デビュー8年目で開いた第1回目のリサイタル、10周年第2回、15周年3回、21周年4回、30周年5回の盤だ。さらに労音での2回、NHKビッグショー1回、ホテル2回が残されている。
 いずれも、フランク永井自身がMCを務めて進めるという形式で、自分のデビュー前後のエピソードをテーマに語りながらというのがあって、それを聴くことで彼がどう歌手になり、どう苦労したがを知ったものである。
 歌を紹介しながら観衆と一体になっていく雰囲気が伝わる。またライブはレコードとやや演奏(編曲)が異なり、舞台用の歌い方というのがよくわかるので、歌い方の勘所が別の魅力を与えてくれる。
 「オン・ステージ」という名称では、労音での2回の公演を一枚にまとめた盤(1970)で最初に使われた。1976年に「魅惑のオン・ステージ」がリリースされた。これは大阪ロイヤルホテル・スカイラウンジ・ショーでの講演のライブである。LPはSJX-10144だ。生き生きとした演奏とトークで、曲は両面で19曲入っている。
 ところがこの「魅惑のオン・ステージ」には、別途テープ盤というのがあった。同年にVCH-3099で発売されている。なんとテープ盤にはLP盤にはない曲が9曲追加で入っているのである。
 この情報は、このたびも筆者をしのぐフランク永井の熱心なファンが教えいただいた。そのうえ、お持ちの貴重なテープを聞かせていただいたのである。感謝にたえない。そこで、そのバージョンについてここで紹介したい。*印がついている曲がLP盤には入っていないもの。

 01 君恋し
 02 東京午前三時
 03 加茂川ブルース
 04 大阪ろまん
 05 おまえに
 06 星になりたい*
 07 夜霧に消えたチャコ*
 08 俺は淋しいんだ*
 09 酒場の花
 10 誰よりも君を愛す*
 11 東京ナイト・クラブ(客と)
 12 ラブ・レター
 13 こいさんのラブ・コール*
 14 有楽町で逢いましょう
 15 夜霧の第二国道
 16 羽田発7時50分
 17 大阪ぐらし
 18 熱海ブルース
 19 大阪野郎*
 20 船場ごころ*
 21 追憶の女(おもいでのひと)
 22 16トン*
 23 ばらの刺青
 24 西銀座駅前
 25 暗い港のブルース*
 26 霧子のタンゴ(英語版も)
 27 赤いグラス
 28 君恋し

 ライブは楽しかったに違いない。ヒット曲、今売り出したい曲(ここでは「酒場の花」)、自分が好きな曲(追憶の女)、デビュー時の洋楽、カバー...と。
 「追憶の女」はデビュー間もない1958(S33)「街角のギター」のB面で最初に出たもの。B面ゆえに2月にリリースされた「懐かしのフランク永井」はA面コンプリートにはいっていない。いい歌だし、フランク永井自身はそうとう思い入れがあったようで、1963(S38)年に「追憶(ついおく)」に曲名を変え、ステレオ再吹込みで発売している。このライブでも話しているのだが、追憶の女と書いておもいでのひとと読ませるのは、やや流行させるにはやや弱いということであったようだ。だが、ついおくの名での売り出しはこの時だけだったようだ。
 1967年の労音ライブでも、1978年のNHKビッグショーでも、この盤(1976)でもおもいでのひとで紹介しているからだ。なお、ステレオ版「追憶」はMEG-CDから復刻リリースされている。
 テープ盤のみの曲では「暗い港のブルース」のカバーが入っている。記録ではこれが初で、後に1971(S46)年の「琵琶湖周航の歌」でLPにいれた。「グッドナイト・ベイビー」で著名なザ・キングトーンズのこの名曲は、ちあきなおみなど多くの歌手にカバーされているがフランク永井の歌唱も有名だ。
 さらにはアイ・ジョージの「赤いグラス」カバー。この傑作は1976年に松尾和子とのデュエット盤が傑作で多くのファンを持つ。アイ・ジョージは親友という関係で、米軍キャンプまわりの時代からの付き合い。労音でも常連だった、アイ・ジョージをこのライブでも歌仇として紹介している。そしてフランク永井ならではの関係から、本名が石松譲治で、初期は黒田春雄やハリー黒田で歌いいつの間にかアイ・ジョージになっていい曲を得て名が広がったのだとばらしている。
 アイ・ジョージの代表曲といえば「硝子のジョニー」だが、フランク永井はこれも歌っているという噂は聴くのだが記録にはない。発売はされなかったが、音源はもしかしてあるかもしれない、などと思いつつ楽しませてもらった。
 テープ盤(版)を筆者がフランク永井のデータブックを出版した後まで軽視してみていたということは、たびたび書いたが、LPの1枚に収まる時間の制限と、テープに収まる時間の制限の違いから、テープ盤には「ボーナス・トラック」なるのが入っていることがある。これは、いつも思わぬ発見に出くわすのである。
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 フランク永井もその大きな一角を担った昭和歌謡。そのきらめく昭和歌謡を花どった歌手とアイドル、スターを一同に紹介するという画期的な展示会が開かれた。
 銀座、神田、浅草といった地域全体でのさまざまな連携イベントも繰り広げられた。主催はNPO法人ミュージックソムリエ協会では、次のように紹介している。「本展では歌謡曲の歴史を彩ったシングル・レコードのジャケットが、壁面いっぱいに飾られるなかで、当時のポスター・写真・ビデオ・パンフレット・原稿・楽譜・楽器・雑誌・衣装などが約200点展示されます。また、山野楽器、ディスクユニオン、八重洲ブックセンターなどと協力、それら歌謡曲が収録されたCDやDVD、アナログレコード、書籍、グッズなどを販売」と。
 筆者は、いうまでもなく、この展示でフランク永井がどのような紹介をされているのだろうという興味と、知人で日本有数の蓄音機のコレクターであり、研究者であるSさんの誘いがあったこと。彼はこの展示のなかで、世界的にも珍しいエジソン型の蓄音機を10台提供、コーナーを飾っていたのだ。
 以前に現物で百年ほど前のものと思える貴重な音源(パイプ型の瘻管)をそれらの蓄音機で聴かせていただいたことがあった。エジソン型用のレコード盤が縦波なのに対し、主流になったのは横波の盤なのだ。このような場でないとそれらにお目にかかれる機会はなくなってきている。

 さて、今回の企画は昭和のスターとアイドルを全カバーするということで、以下のような多くのコーナーがあり、それぞれに見ていて楽しい、そして懐かしいようなものがこれでもかと飾ってあった。

  1.ジャズ・エイジの夜明けとともに始まった歌謡曲
  2.叙情性が新鮮だった古賀政男メロディー
  3.音楽隊出身の服部良一、真骨頂はジャズとリズム
  4.焼け跡に花が咲いた三木鶏郎と冗談音楽
  5.踊って歌えるブギが流行、少女スター美空ひばりの誕生
  6.アイドル第1号は三人娘「ひばり・チエミ・いづみ」
  7.日本に定着したシャンソンやポップスの先駆者たち
  8.日劇ウエスタンカーニバルで爆発したロカビリー革命
  9.アメリカン・ポップスから生まれたティーン・アイドルたち
 10.日本調で成功した青春歌謡の御三家
 11.「上を向いて歩こう」が全米チャート1位の金字塔!
 12.エレキ・ギターの普及と加山雄三ブーム
 13.グループ・サウンズが遂げた革命と男性アイドルの登場
 14.日本調の演歌、艶歌、援歌、怨歌の巻き返し
 15.テレビから始まった七〇年代のアイドル歌謡曲(キャンディーズなど)
 16.シンガー・ソングライターとバンドの時代
 17.昭和のテレビドラマと歌謡曲~久世光彦の世界
 18.誰も歌える曲があふれていたテレビの歌番組(『ザ・ベストテン』の美術セットの模型などの展示)
 19.時代の証言者・小西良太郎が選んだ「昭和の歌100」
 20.ミュージックソムリエ協会が選んだスタンダード1000曲
 21.ヒットチャートから読み解く時代

 「ムード歌謡から生まれたヒット曲」という見出しの下に、いやその周囲にフランク永井の作品紹介があった。写真のように、君恋し、有楽町で逢いましょう、西銀座駅前、東京ナイトクラブ、公園の手品師、おまえにのジャケットがあり、「ザ・カバーズ」のCD-BOXが展示さていた。また、恩師吉田正の紹介、作詞歌佐伯孝夫のことなどの写真やパネルが見受けられた。

 実は、8日には両国・江戸東京博物館ホールで『浅草オペラ100年と二村定一リスペクト・ショー』という催しもあり時間的に無理があって行けなかった。こちらは「大正・昭和初期の浅草オペラからジャズソング、そしてエロ・グロ・ナンセンスの時代を駆け抜けた伝説の名歌手「二村定一」を、まもなく100年を迎える彼を輩出した浅草オペラと共に再検証しつつ、トークとライブでたどるバラエティ・ショー!」というもので、それなりに楽しめるのではというものであった。
 二村定一は「君恋し」を初期に歌ってヒットさせたという人なので、その関連での新発見を期待していたもの。
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 「懐かしのフランク永井」というCD-BOXが特選DVDを付けて発売され、これがシングル曲でA面で歌ったものをほとんどカバーしたことから、フランク永井の歌が高音質のデジタルでいつでも楽しめるようになった。しかもそれらの曲の多くが、現代の流行にあわせてインターネットからのダウンロード配信されている。
 ビクターのサイトからはもちろん、レコチョク、moraなどをはじめとする多くの配信サイトが扱っている。しかも、歌のうまかったフランク永井のレコーディングも定評があって、それを生かしたハイレゾ版でも送信されているのがいい。

 レクチョクのサイトを見ると、アルバムでは18件あり、シングルでは217件に達する。フランク永井が残した曲がおよそ800曲であるが、うちファンの耳に残っていて聞き返したいというような曲については、おおかたが実現されているのではないかといえる。
 ハイレゾ音源については、高音質のマスター音源から主流のCD規格の音質にデジタル化する際に制限された音情報を最大限に活かすようにしたものだ。ここ数年で急速にハイレゾを楽しめる機器環境がそろいだいしてきているので、まだまだ広がるだろう。
 ハイレゾ配信では、10枚のアルバムが出ている。これらは先行あるいは同時に発売されたCD商品もあるが、ダウンロードだけのものも出てきた。特に最新では「ステレオ・ハイライト」シリーズ全6巻から、最初の1と2が入った。
 「ステレオ・ハイライト」については、ファンが長年なぜにCD復刻されないのかと思ってきた製品だけに、おおきなプレゼントなのではないだろうか。しかも、いくらフランク永井が洋楽カバーの達人であったとしても、多くがジャズやカバーが先行して高音質配信されてきたなかで、「ステレオ・ハイライト」はフランク永井のオリジナル曲であるからだ。
 多くの人に感銘を与える曲作りはどうしたのだ、と言いたくなるようなご時世なのか、若い歌手も含めてカバーが大流行だ。秀逸な作品が多いフランク永井についても、洋楽については毎年のように出てきた。「フランク、ジャズを歌う」「スタンダードを歌う」...と。そして、「フランク永井~ザ・カバーズ」「魅惑の低音再び」などである。
 フランク永井の「ステレオ・ハイライト」は、その時期までモノラル音源だけだったのが、この時期を境に一気にステレオ時代に移行していくのだが、その最初のシリーズである。1962年に「ステレオ・魅惑の低音傑作集」(SLV-13)が最初のLPだ。その時点までのフランク永井のヒット曲8点をステレオ再吹込みをして出している。当時「魅惑の低音」シリーズという人気LPシリーズがあって、13巻まで続いていたが、ステレオ時代になり、それが「ステレオ・ハイライト」シリーズに受け継がれる形になった。
 第1巻は当時までのヒット曲で未ステレオ化だったものも再吹込みをして、12点のベスト盤としてリリースされた。第2巻は、1巻に含まれなかったものと、1964年のこの時期の曲だ。第2巻以降、このシリーズは6巻まで続くのだが、特徴は必ず3~4曲を別途LPのために作っていることだ。そのために、ここの2巻でもシングル盤では登場しない4曲が含められている。ボーナスである。
 「君恋し」はレコード大賞も受賞した代表曲だが、シングル・レコードは、モノラルの最後の時期の曲で、実はステレオ録音していて、それをモノラルとして出したのだとかいう話題でもあったのだが、それが入っている。曲リストにあるように、いま聞き直すとんとなんとも感慨深いレアな曲があってうれしい。

 今では考えられないことだが、ステレオでの響きはどうなんだろうという、未知のことについての強い興味を持って聞き耳立てて聴き入ったものだ。当時、聴く装置が安物だったせいか期待したほどの満足感はなかったのだが、わずかであっても左右の音の違いに気づくたびに、これが「ステレオ録音」なんだと納得していた覚えがある。

 ステレオ・ハイライト Vol.1
  01 逢いたくて
  02 君恋し
  03 新東京小唄
  04 東京ナイト・クラブ(松尾和子と)
  05 夏の終りに
  06 冬子という女
  07 霧子のタンゴ
  08 戦場の恋
  09 東京カチート
  10 夜霧に消えたチャコ
  11 有楽町で逢いましょう
  12 夜霧の第二国道

 ステレオ・ハイライト Vol.2
  01 国道18号線(松尾和子と)
  02 ロマンの街
  03 水色のブルース
  04 振り向けばひとり
  05 東京恋情
  06 並行線の街*
  07 太陽は撃てない
  08 むせび泣き
  09 新大阪小唄
  10 さすらいの雨が降る
  11 男
  12 頬よせあい灯りを消そう

(注:データブックでは、Vol2 Trk06「並行線の街」が漏れていました。この機会に訂正させていただきます)