2016年3月アーカイブ

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 フランク永井が歌う「まわり道」といえば、ファンならご存知1985(S60)年11月に発売された「あなたのすべてを」のB面シングルだ。佐々木勉の作品でフランク永井が第一線から降板する最後のシングルである。このファンにとって忘れられない曲と同名の曲を、1983(S58)年に歌い、VCH-2767「夜のムード歌謡」というカセットテープで発売していた。
 これは元大関琴風豪規が1982年に歌い50万枚の人気を博した曲。なかにしれいと三木たかしの傑作である。角界の歌手といえば増位山太志郎が相撲界を引退後歌手専業になったことで有名。相撲界のひとは身体がよく、声も心底からだすためか、歌のうまい人が多い。相撲甚句では大至。横綱北の富士、元隆三杉の常盤山親方、そして琴風(年寄・尾車)と多い。
 琴風は石川さゆりと「東京めぐり愛」を出した。「東京かくれんぼ」「東京たずね人」との三部作で、1984年には第26回日本レコード大賞企画賞を受賞している。
 さて「まわり道」だが、先述したように佐々木勉の曲を何度も聴いているせいか、カセットテープに「まわり道」が入っているのは知っていても、これが琴風の歌のカバーとは端から思わなかったという、例によって筆者の何度かの禍。テープ版だけに入っている曲はあるはずがない、かならずシングルかLPで出ているはずだという誤った思い上がり(思い込み)。まぁ、そのせいで、再発見につながり、フレッシュに鑑賞できる(と強がり)。
 聴いてみてわかるが、やはりうまい。原曲はそれで完成していていいのだが、フランク永井が歌うとほとほと感心する。歌を作る作詞家と作曲家の創作の思いを深く理解し、それに聞き手を意識しながら自分の歌へのプロとしての技巧を重ねていっている。
 このカセット版は下記のようにすべてあの時代の代表的な人気ムード歌謡だ。「まわり道」のほかは確かに他の商品でも聴くことができる。「よこはま物語」は別のテープ版に収められているが、EPやLPではでていない。
 テープ版は何度も繰り返して聴くと、テープが波打ってだめになるが、それまでであれば結構いい音で楽しめる。LPやEPは傷をつけるとまずいが、見かけは美品でもノイズが忍び込むことがおおい。溝に何やら油性?の粉じんが忍び付いて、いい音を邪魔する。そんなことから、最近はときどきかつて軽視したテープを聴く。そして思いがけない新発見、いや再発掘をするという楽しみに遭遇するのである。

1983:VCH-2767 夜のムード歌謡
 01 氷雨
 02 まわり道
 03 男の背中
 04 よこはま物語
 05 おゆき
 06 ラブ・ユー東京
 07 夜霧よ今夜も有難う
 08 今日でお別れ
 09 サチコ
 10 ブランデー・グラス
 11 酒場にて
 12 別れても
 13 くちなしの花
 14 二人の世界
 15 君こそわが命
 16 夜の銀狐

(※落語つながりの一文は筆者うる覚えの勘違いでしたので、削除しました。3/27)
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 3月18日はフランク永井の誕生日。この時期、今年もフランク永井ファンに向けて新たなCDがリリースされた。「フランク永井 昭和歌謡を歌う」というタイトルで、15曲収録されている。
 特徴は、本人の6つの代表曲と昭和歌謡の名曲のカバーという組み合わせだ。

  1. 有楽町で逢いましょう
  2. 君待てども / トランペット:ニニ・ロッソ / 平野愛子
  3. 今日でお別れ / 菅原洋一
  4. 夜霧のブルース / ディック・ミネ
  5. おまえに
  6. 雨に咲く花 / トランペット:ニニ・ロッソ 井上ひろし
  7. 夜霧よ今夜も有難う / 石原裕次郎
  8. 夜霧の第二国道
  9. 霧子のタンゴ
 10. くちなしの花 / 渡哲也
 11. 星影の小径 / 小畑実
 12. ウナ・セラ・ディ東京 / ザ・ピーナッツ
 13. ブランデーグラス / 石原裕次郎
 14. 君恋し
 15. 東京ナイトクラブ / デュエット:松尾和子

 いずれのカバー曲もここ数年のあいだにCD復刻で紹介されたものばかりであるが、そのなかでも人気のある曲が取り上げられている。平野愛子の「君待てども」はフランク永井が素晴らしい歌唱をしおり、1966:SV-364でシングルが発売された。同じく「星影の小径」もビクターの盟友小畑実に敬意を払い、シングルが出されている。
 「君恋し」によってリバイバル・ブームに火が付き、ディック・ミネの「夜霧のブルース」、井上ひろしがカバーした「雨に咲く花」をさらにフランク永井がカバーしたもの。ディック・ミネはご存じのように同時代の先輩で、フランク永井がデビューしたがジャズ歌手として売れずにうじうじしていた時期、恩師吉田正に流行歌への転向を進められていたときに相談した。ミネは「当然やってみるべきだよ」とアドバイスした。それで気持ちがふっきれたという。
 さらにこのCDでは、ムードいっぱいの菅原洋一の明唱「今日でお別れ」、ザ・ピーナッツの「ウナ・セラ・ディ東京」がはいり、同じ低音の魅力で飛ばした俳優石原裕次郎のヒット曲2曲。同じ石原軍団の渡哲也の昭和史に燦然と輝く「くちなしの花」のカバーを入れている。
 フランク永井自身が昭和歌謡史の一角を占めていたことから、当然の流れとして「有楽町で逢いましょう」から「君恋し」を自然に挟んでいる。
 1972年のNHK紅白でトランぺッターの二二・ロッソと共演したが、その縁と双方の敬意からローマで別途アルバムを制作した。1973:SJX-41189「君恋し~二二・ロッソと唄う」を発売した。そのアルバムにも入り、シングルでも発売されたのが先の「君待てども」「雨に咲く花」だ。この2曲は二二・ロッソのトランペットがいい味わいを出している。このCDの「君待てども」は二二・ロッソ共演版になっている。
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 「懐かしのフランク永井」はいい。映像DVDも見ごたえがあるのだが、10枚のCDにまとめられたA面シングル215曲は聴きごたえがある。聴きなれている代表曲は当然としても、当時も売り出してもあまり売れなかったような曲であっても、大変フレッシュに聴くことができる。
 フランク永井の作ってきたイメージに合わないといわれてような雰囲気の曲でも、けっして手を抜くようなことなく、真剣な曲作りをしていることが感じられる。
 出されたシングル盤は当時の流れとして、両面が「フランク永井」であったわけではない。むしろ積極的に三浦洸一とか和田弘とマヒナスターズとかのトップ歌手とのカップリングを組んだ。さらに、売り出したい新人の名を出す意味で片面に採用することもあった。
 ライナーノートでも出ているように、力道山が経営していた赤坂のクラブ・リキで無名でいい歌を聴かせていた松尾和子を、客として聴いていたフランク永井がその歌のうまさをみつけて、恩師の吉田正をわざわざ連れ出して聴かせた。他のレコード会社からも引きがあったようだ。しかしスカウトに成功したビクターや吉田正やフランク永井が、松尾の売り出しは絶対成功させねばならないと意気込み、A面に松尾のデビュー・シングル「グッド・ナイト」をすえ、B面ではフランク永井とのデュエット「東京ナイト・クラブ」を売り出した。
 これは大人のムード歌謡の端緒きずき、デュエットとしてもその「ゴールデン・デュエット」として一大人気曲となった。力道山に対しても恥をかかせるわけにはいかないと、皆が一丸であったという。
 フランク永井はデュエットを松尾と何曲か出しているが、このコンビの絶妙さというか、歌のうまい二人の歌唱はおそらく現在でも右に出るものはないと思う。フランク永井は他の歌手と多く歌っているが、今回のA面シングル全集でとりあげられてデュエットあるいは伴唱、コーラスは以下のようにある。

 #01 T15 東京踊り         市丸 三浦洸一 神楽坂浮子
 #01 T21 夜の波紋         和田弘とマヒナスターズ
 #02 T12 三人吉三         三浦洸一 浜村美智子
 #02 T16 婿さがし八百八丁     藤本二三代
 #03 T02 東京ナイト・クラブ    松尾和子
 #03 T10 俺は涙を知らない男    スリー・グレーセス
 #03 T14 夜の招待         和田弘とマヒナスターズ 松尾和子
 #04 T07 東京デイト        ブラック・キャッツ
 #04 T09 東京ドドンパ音頭     松尾和子 藤本二三代 多摩幸子
 #04 T11 ワイキキの月       ブラック・キャッツ
 #05 T08 二人の足音        今井京子
 #05 T16 満塁ホーマー       ハニー・ナイツ
 #06 T01 月火水木金土日の歌    真理ヨシコ 松島みどり
 #06 T14 なぜ           松島みどり
 #06 T19 国道18号線        松尾和子
 #07 T09 恋のバースデー      清水まどか
 #08 T21 水のように        浪花千栄子(セリフ)
 #09 T08 今宵だけのパートナー   田代美代子
 #10 T01 涙への旅立ち       二二・ロッソ(トランペット)
 #10 T08 11時(エレブン)過ぎから 松尾和子

 どれも独唱では得られない効果を出すのに成功している。コーラスを背景にして歌うことで、メインの歌手の魅力をどう引き立てるかということが、時代としてさまざまな挑戦があったように感じる。
 スリー・グレーセス「山のロザリア」は当時毎日流れていたが、彼女らと組んだ「俺は涙を知らない男」。ブラック・キャッツとの曲も2曲でている。ハニー・ハイツと「満塁ホーマー」を歌っているが好きな曲である。
 なお、リストの「恋のバースデー」は閲覧くださった方からご指摘があったようにデュエット版ではなくフランク永井だけのソロ版が収録されている。これはおそらく取り違いと思えるが、それにしてもソロ版の音源があったことが驚きである。