2016年2月アーカイブ

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 「懐かしのフランク永井シングル全集」全215曲と映像28曲が、2月24日に全国いっせいに発売され、さっそくに聴いて観てみた。10枚全部のCDは聴くだけで長時間を要するので、所有していない曲を選んで聴いてみた。
 まず、何年も前に知人が曲だけ聞かせてくださった「78回転のSPレコード」(1960:VS-369 CD-3)。新たにビクターの自慢のデジタル化復刻盤だけあってフランク永井のデビュー時代の唯一のメディアであったSP盤、分78回転レコードをズバリテーマに歌ったもの。レコードを聴きながら、別れた恋人を懐かしむの重ねた詞を、静かにひっそりと歌う。フランク永井の曲イメージとはかけ離れているという感じを受けるかもしれないが、「夜霧の第二国道」の宮川哲夫と、「俺は淋しいんだ」の渡久地政信のすばらしい作品だ。
 残念ながらこのオリジナル版は相当なレアとみえて、筆者はいまだみたことがない。
 次は「なぜ」(1964:BS-173 CD-6)。1962年に当時NHKの子供番組で活躍していた服部公一がフランク永井のソフトでやさしい歌唱に目をつけて、谷川俊太郎らと組んで、子供向けのLP「フランクおじさんといっしょ」をつくった。この企画のユニークさがあたり「月火水木金土日の歌」は日本レコード大賞作詞賞を得た。
 この流れでシングル盤もでたのだが、LP盤に未収録の曲がこの「なぜ」だ。この盤のレア度も半端ではない。このたび曲も初めて聴いた。こどもを対象とした歌が現在どのようなものか知らないが、こどもが素朴に「なぜ」と言って聞きたがることを、松島みどりとのかけあいで歌っている。フランク永井の声がこうしたうたにぴったりであることを、証明するような貴重な曲だ。
 同様に子ども向けの曲で、フランク永井のオリジナル曲ではなかったと思うが、タイトルを聴いただけで遊びを感じてしまう「ネムチェンコじいさん」(1963:BS-152 CD-6)だ。確か池田直樹とか友竹正則も歌ていたと思う。
 「~いつでも居眠りネムチェンコ~」というこっけいに描いた詞をきれいに歌っている。これもフランク永井を打ち出したい世界と異なるということで、押しがなされなかった曲のひとつだ。
 これらの歌をきくと、フランク永井という歌手が単なる歌謡曲やジャズの歌手ではなく、広い範囲に真剣に挑戦し、それぞれの分野に応じたすぐれた味を実現していた歌手であることがわかる。このたびのCD-BOXであればこそである。

 さて、NHK秘蔵の映像というDVDだが、これもたっぷりと堪能できるものになっている。初出(再放送ということで)の「恋はやさし野辺の花よ」(1968歌まつり明治百年)にしても「生命ある限り」(1967紅白歌合戦)もモノクロ映像で、そうとうな劣化状態のものである。
 こうした記念企画でもなければ採用するに難があるというものかもしれない。しかし、フランク永井についてはすでにそうした資料はすべて貴重な遺産そのものでる。
 1981年思い出のメロディーで歌った「東京の屋根の下で」は八代亜紀とのデュエットだ。同様に同年NHK歌謡ホールでの「無情の夢」も珍しい映像だ。
 フランク永井の残された映像は多くなく、確かに何度か放映されたものが多いかもしれないが、この度1963年の紅白映像(恐らく残されてる映像としては最初かも知れない)から、順に後年まで通して観ることができる。若いモノクロ時代から熟年の歌までおよそ1時間である。

 発売が始まったばかりだ。ぜひとも多くの方が手に取って見られることを期待する。ファンの期待に応える貴重な作品であった。

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 『懐かしのフランク永井シングル全集』が発売される。前回に引き続いて紹介する。
 ビクターファミリークラブの「ベスト・コレクション春号」に全ページ広告。連携しているコロンビアの通信販売誌にも。
 発売元の説明を見てみると、以下のような装飾過剰そうなフレーズが意気込みを伝える。
 フランク永井、デビュー60周年を機に、発のシングル完全収録盤を発売。デビューからラストシングルまで、偉大な歌謡界での30年の足跡をたどる。昭和歌謡の黄金時代を築いた大歌手の、シングル全曲(初のシングルA面全215曲:デジタル・リマスタリング高音質)を収録した初の大全集。ボーナスDVDにはNHKのアーカイブスから貴重な選りすぐりの映像を特別に収録。フランク永井、30年間の歩みのすべて...。昭和30年代、"魅惑の低音"で一世を風靡、戦後歌謡を築いた大歌手のシングルA面全曲を網羅した愛蔵盤。1956(昭和31)年、ジャズ歌手として発売した初A面曲から1985(昭和60)年まで、豪華作家陣が提供した珠玉の音源で、昭和歌謡黄金時代を再現する大全集。企画監修:高橋まさひと。解説・ディスコグラフィー付。
 CD-BOXは年代順に、次のような構成だ。
 01: 有楽町で逢いましょう(1956-1958)
 02: 夜霧に消えたチャコ(1958-1959)
 03: 東京ナイト・クラブ(1959-1960)
 04: 君恋し(1960-1962)
 05: 霧子のタンゴ(1962-1963)
 06: 逢いたくて(1963-1964)
 07: 妻を恋うる唄(1964-1966)
 08: 大阪ろまん(1966-1968)
 09: おまえに(1968-1973)
 10: 公園の手品師(1973-1985)

 「公園の手品師」は何度も書いていることだが、1956年つまりデビューして2年目に大阪の毎日放送(ラジオ)のホームソングで歌い人気を得た曲で、1958年に「たそがれ酒場」のB面で発売したSPである。これは、息の長いヒット曲で1978年にステレオ録音されてA面で出されたレコードだ。A面にこだわったこともあり、またステレオのこちらがファンの耳に残っていることもあり、盤10に収録された。
 各CDにはおよそ3年分を納めているが、盤9は6年、盤10は12年分。フランク永井大活躍をしていた時期は1970年代までの前半であることがわかる。

 さて今回はボーナスDVDというビデオ収録のリストを紹介する。

01: 逢いたくて(1963/12/31 第14回 NHK紅白歌合戦)
02: 生命ある限り(1967/12/31 第18回 NHK紅白歌合戦)
03: ゴンドラの唄(1968/10/23 歌まつり明治百年)
04: 恋はやさし野辺の花よ(1968/10/23 歌まつり明治百年)
05: 加茂川ブルース(1968/12/31 第19回 NHK紅白歌合戦)
06: 大阪流し(1970/12/31 第21回 NHK紅白歌合戦)
07: 有楽町で逢いましょう(1974/8/3 第6回 思い出のメロディー)
08: おまえに(1974/12/31 第25回 NHK紅白歌合戦)
09: 君恋し(1975/8/2 第7回 思い出のメロディー)
10: 東京午前三時(1976/12/31 第27回 NHK紅白歌合戦)
11: 銀座ブルース(1977/2/20 ビッグショー 松尾和子 ~女ひとりの命をかけて~)
12: 夜霧の第二国道(1978/10/31 ビッグショー「吉田正 作曲生活30年」)
13: おまえに(1978/10/31 ビッグショー「吉田正 作曲生活30年」)
14: 公園の手品師(1978/12/31 第29回 NHK紅白歌合戦)
15: 君恋し(1980/8/9 第12回 思い出のメロディー)
16: 大阪ぐらし(1980/8/26 歌謡日本百景)
17: 大阪ろまん(1980/8/26 歌謡日本百景)
18: 恋はお洒落に(1980/12/31 第31回 NHK紅白歌合戦)
19: 追憶(1981/7/25 昭和56年度 古賀政男記念音楽大賞)
20: 東京の屋根の下(1981/8/8 第13回 思い出のメロディー)
21: 無情の夢(1981/8/25 特集 NHK歌謡ホール 演歌スペシャル80分)
22: 俺は淋しいんだ(1982/8/7 第14回 思い出のメロディー)
23: 霧子のタンゴ(1982/9/16 この人「吉田正ショー」)
24: 時の過ぎゆくままに(映画「カサブランカ」から)(1982/10/2 映画音楽大全集)
25: こいさんのラブコール(1983/8/13 第15回 思い出のメロディー)
26: マイ・ベイビーズ・カミン・ホーム(1984/10/4 この人「フランク永井ショー」)
27: 東京ナイト・クラブ(1984/10/4 この人「フランク永井ショー」)
28: 有楽町で逢いましょう(1985/8/17 第17回 思い出のメロディー)

 前回も記したように、「04:恋はやさし野辺の花よ」は、たいへんな貴重映像だ。筆者も含めて初めて聴く(当時見ていても記憶にないため)というファンも多いはずだ。また日活の和泉雅子とのデュエットという点でも珍しい。和泉雅子は山内賢と歌ったベンチャーズの「二人の銀座」(1966:東芝レコード)が有名。
 「恋はやさし野辺の花よ」は、浅草オペラの名曲で、田谷力三や藤山一郎など多くの人が歌っている。古いカバーでは「20:東京の屋根の下」「21:無情の夢」「03:ゴンドラの唄」も逃せない。
 フランク永井のデュエットといえば、ゴールデン・デュエットの名を欲しいままにした松尾和子と2曲はいっている。当然「東京ナイト・クラブ」がり、さらに「銀座ブルース」を一緒に歌っている。
 洋楽カバーでは「26:マイ・ベイビーズ・カミン・ホーム」「24:時の過ぎゆくままに(As Time Goes By)」というのもいい。

 全曲目のリストは発売元のビクターのサイトをご参照のほど。
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A000152/VIZL-941.html
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 フランク永井の1955年のデビューから60年以上経過、1985年に舞台を降りてからも早や30年経つ。フランク永井が永年所属していたビクターから、記念する特別企画が発売される。10枚のCDにさらにDVD映像が付くという作品で、全215曲と28曲を歌う1時間を超す映像である。今月24日に一斉発売される。ボックスでも1枚単位でも購入可能。価格は\24,200。
 フランク永井のボックス商品は、過去にいくつか発売されている。全集と名がつくものもヒット曲を集めたものと、ステレオで再吹込みされたものとあった。
 このたびの「懐かしのフランク永井シングル全集」では、一味違う編成をしているのに気づく。デビュー以来のシングルレコードおよそ250枚から、A面曲を極力多く選出するという特徴が見受けられる。しかしCD10枚に収めるためにはどうしても無理がある。それでも、まだデジタル化(CD化)していなかった曲を多く採用するということが実現されている。
 およそだが40余曲が新たにCDで聴けるから、ファンにはうれしい。フランク永井の残したすばらしい財産が、いままであきらめながら羨望してきたものがこの商品で、いっきに実現したといえる。
 ジャケット写真にかかげた「瀬戸内海ブルース」は基本的に地方の観光が目的で作られたプライベート盤の性格のもので、筆者監修の「データブック~フランク永井魅惑の低音のすべて」(2010)では解説で紹介していたものだ。これが正式に復刻した。さらに名が知れていながらデジタル化がされてこなかったものでは「恋うた~ラブ・コール」。レコード盤がほとんどない「なぜ」。「ゲゲゲの鬼太郎」を歌った名優熊倉一雄がB面で歌う「おたまじゃくしのうた」をもつ盤で、他の歌手とフランク永井が競作で歌った「ネムチェンコじいさん」などが入った。
 「追憶の女(おもいでのひと)」という曲が1958年にSPで「街角のギター」がで出た。これはB面だったこともあり、タイトルの読みがすなおに受け入れられなかったせいか、いい曲にもかかわらず知る人ぞ知るであった。それが1963年に「追憶」と名を変えてステレオ再吹込みで出された。これが採用されている。なお同名の曲が後年の1981年に出されたがこれは異曲。これも10枚目に収まっている。
 フランク永井のデジタル化復刻は、MEG-CDがここ何年か積極的に進めてきた実績がある。すでに200曲近くを扱ってきた。上記で紹介したのは、MEG-CDからも未復刻の曲である。今回の復刻を含めると、まだ実現していないというフランク永井の曲は、あとわずか、数十曲となる。このたび大元のビクターから発売されているので、MEG-CDと連携してでも完全な全復刻になる日もあるのではないかと、期待をふくらましている。

 DVD「懐かしのフランク永井映像選集」は、NHKとビクターエンターテインメントの集成作品で、28曲というのがすごい。NHK紅白歌合戦は別項でも何度か触れているが、フランク永井は当時の連続出場26回という記録保持者だった。映像は初期のものがなく、音声だけといいうのもある。その中から、今回のDVDには8本が選ばれている。
 NHK放送開始60周年記念のときに、NHK-BSで再放送されたのだがその際にも録画を漏らした第18回「生命ある限り」(1967)第22回「羽田発7時50分」(1971)。うち「命ある限り」が今回のDVDに入っている。ちなみに、残っている最古の第14回「逢いたくて」を含む18、19「加茂川ブルース」、21「大阪流し」、25「おまえに」、27「東京午前三時」、29「公園の手品師」、31「恋はお洒落に」が入った。
 他は主にフランク永井が出演した番組「ビッグ・ショー」「思い出のメロディー」「フランク永井ショー」他からの懐かしい映像だ。中でも、発出であり「データ・ブック」でもふれていない「恋はやさし野辺の花よ」が入れられたのは特筆だ。誰もが知る名曲のカバーだ。1968年の番組「歌まつり明治百年」で和泉雅子とデュエットしている珍しい映像。
 残存する映像が少ないフランク永井だが、比較的多く所有しているNHKがセレクトし(かつシェープアップ?し)た決定版ともいえるものだ。
 このように、フランク永井の記録をまとめ、デビュー60周年という節目にファンに提供してくれたことに拍手を送りたい。フランク永井が活躍した時代に熱烈なファンだった人びとの多くは高齢者だ。その方がたのこころにはかり知れない印象を与えた当時の記録の数々を、惜しみなく披露してくれた。
 若いファンには後年の山下達郎作品である「WOMAN」(MEG-CDから復刻されている)人気と聞く。すばらしいことである。だがメインのご高齢のファンの方々が健在のこの時期にこそ、まだ残されていると思えるフランク永井の残した歌の数々を、継続してまとめてもらえると、光を感じた次第。フランク永井も草葉の陰であの笑顔でうなずいているようだ。

※2/8改訂:NHKからDVD「懐かしのフランク永井映像選集」が発売されるような表示がサイトでもありましたが、単独での発売はありません。