


【特別功労賞 フランク永井殿 あなたは永きに渡りビクター専属歌手として我々の心に残るヒット曲を多数歌唱され、当社の業績に多大なる貢献をされました。そして今もなお、あなたの歌は音楽ファンから多くの支持を受け、歌謡史に燦然と輝いております。よってその栄誉をたたえ、7回忌を迎えるにあたり改めて感謝の証としてここに表彰します。平成26年10月27日 株式会社JVCケンウッド・ビクターエンターテインメント 代表取締役社長 斉藤正明】
このような内容の特別功労賞が、昨年7回忌を迎えた日にビクターからフランク永井に贈られていることを最近知らされた。舞台からおりて早や30年も経つのに、残した業績をたたえて、デビュー60周年、7回忌の記念すべきときに、このような賞をさずけるビクターに対してもたたえざるを得ない。フランク永井もビクターも立派にこのようなことをされた。
また、同時にフランク永井ファンにとってはこれまたうれしいニュースがある。ちょっと大きな規模だが、新たにCD-BOX「フランク永井の世界」が発売される。発売元はユーキャン(TEL:03-3378-0770)である。
著名なエンターテナーの「...世界」シリーズの一環の豪華ボックスである。CD7枚組で、歌詞集の他にフルカラーの観賞アルバムとして、徳光和夫、野沢あぐむ、村松友視、北村英治、大村崑の寄稿やメッセージがあるほか、恩師吉田正がかつてフランク永井について綴った手記や、年譜、フランク永井歌コンクール、松山の展示室、NHK紅白歌合戦記録などが懐かしい写真、レコードジャケットなどとともに掲載されている。
CD7枚の収録曲だが、フランク永井のヒット曲はすでに皆紹介されて真新しいのがないのではと従来いわれていたうわさと異なる、今回新発売の数曲と初めてデジタル化された曲も含んだ編成になっている。
ファンも驚く初めての曲というのは、
「東京ラブナイト」「上海帰りのリル」「紅屋の娘」「矢車草の唄」「そして...めぐり逢い」
「恋さぐり夢さぐり」「意気地なし」「恋の旅路の果てなのか」「お嫁においで」
の9つ。さらに、洋楽カバーで
「哀しみの愛の日々」
で、計10曲である。これだけで、このCD-BOXの値打ちがあろうというもので、いかに企画と制作のスタッフの意気込みが伝わる作品となっている。
巻1はフランク永井のヒット曲のトップ18なのだが、基本的に初出のモノラル盤のあとで再吹込みされたステレオ版が収録(「西銀座駅前」だけがモノラル)。
巻2は「君恋し」を中心に日本の名曲のカバー集。ここにはフランク永井が尊敬する先輩として敬っていた春日八郎の「別れの一本杉」が収められた。曲自身は20周年記念のLP10巻全集で収録した作品だが、このたびデジタル化で初CD化されたものである。
巻3~5は「東京ナイト・クラブ」や「船場ごころ」「大阪ジェニー」などのドラマ主題歌を含めているが、主に歌謡曲のカバーで構成されている。カバーは昨年暮れに「ザ・カバーズ」で好評をはくしているが、三分の二は異なる曲が選ばれていて新鮮である。
巻6と7は洋楽のカバー集。ここでは漣健児超訳の「おろかな心」「悲恋のワルツ」が聴けるほかに、フランク永井が歌ったハワイアン曲「タイニー・バブルス」「真珠貝の歌」が新たにCD化された。前者はシングル盤で後者はコンパクトWでリリースされていた珍しい盤である。
フランク永井はオリジナル曲で魅了してきたのは当然だが、その特別な歌唱力は当然カバー曲でも独特でユニークな味わいをもっている。ド演歌でもハワイアンでも、古くからの日本歌でもなんでもこなしてしまう。聴いていてソツガながいために、押しつけがましいところがない。
また、ジャズ風なアドリブというか自由にノリを使い分けて歌っている。今回のBOXに入れられた「上海帰りのリル」などの一連の新曲はジャズのノリだ。この名曲は多くの人がカバーしているが、共通して渡久地政信の意図して成功した津村謙の歌って出した雰囲気を踏襲している。しかしフランク永井の「上海帰りのリル」は一味違う。
(敬称略で失礼します。吉田正の「吉」の正式表記は「土」に「口」、徳光和夫の「徳」の正式表記は「心」の上に「一」、村松友視の「視」の正式表記は「示」に「見」です)