


「映画NECOチャンネルネコ」というのは、スカパー!、J:COM、CATV、IPTV等で視聴できるということだが、ここではこの4月の「名画theNIPPON」特集として「ALLWAYS三丁目の夕日」三部作を放送するということである。この映画は近作で人気があるのだが、昭和30年代が時代背景としていることにちなんでの連想からか、フランク永井の代表作「有楽町で逢いましょう」の映画が放映される。
この特集では、1958(S33)~1964(S39)年の間にヒットした歌謡曲の題名をもつ映画が9本連携でとりあげられている。フランク永井「有楽町で逢いましょう」(大映=KADOKAWA:1958)「西銀座駅前」(日活:1958)、島倉千代子「からたち日記」(松竹:1959)、ザ・ピーナッツ「情熱の花」(日活:1960)、橋幸夫「涙にさようならを」(松竹:1965)、石原裕次郎「嵐を呼ぶ男」(日活:1957)、ペギー葉山「南国土佐を後にして」(日活:1958)、都はるみ「アンコ椿は恋の花」(松竹:1965)、岸洋子「夜明けのうた」(日活:1965)、といったところである。
「ALLWAYS三丁目の夕日」もいいのだが、このラインアップを見ただけで何かワクワクしそうではないか。古い映画はその古さに独特の時代観がある。「...三丁目...」は最近のものだけに実にソツなく完成されているが、当時の映画は今のテレビドラマと比べた方がいいかもしれない。いろいろと突っ込みどころが満載なのだが、今と決定的に違うのは登場人物がたいへんピュアで素朴であったことだ。
もちろんこの時代にも悪い奴もいたし、ひねくれものもけっこういたのだが、現代とは異なる安心できる人間関係が現れていた。
似たようなことは日本だけではなく、欧米の映画でもいえる。好きな西部劇でも画面には、素朴で人間味あふれる人びとでいっぱいだった。それが、今は暗部、人間の複雑な部分、裏面をこれでもかと見せつけられ、人間への魅力というよりも計算された別の激しい「感動」を与えている節がある。
戦争が終わって破壊され尽くした都市、当然心も荒むのだが、それをなぐさめ、いやし、時には奮い立たせてくれたのが、当時の流行歌だ。ヤミ商売が闊歩する、汚く汚れた貧相な街有楽町を、ロマンチックに美しく描き、恋と活気のイメージを全日本にもたらしたのが「有楽町で逢いましょう」だった。
実際に地方から東京に出てきた多くの若者によって、東京はみるみる間に復興し、粋でお洒落な街にいきおいよく変化していったのだ。
映画「西銀座駅前」はモノクロだが、「有楽町で逢いましょう」はカラーである。当時まだカラーが実際に使われ始めた時期であった。
「有楽町で逢いましょう」はぜひともお勧めしたい。環境があるかたはぜいとも観てほしい。見逃せないのは「有楽町で逢いましょう」歌が流れるのは当然としても、後半で特別版の歌詞での歌が聴ける。この特別版はこの映画でしか聴けないのである。