フランク永井の「おまえに」...作曲者吉田正が記す「ヒット曲の思い出」より

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 「おまえに」の歌碑が建った。この歌について、フランク永井の恩師でもあり、作曲を自らされた吉田正が、1978(S53)年に書いている。
 岩谷時子が吉田正ご夫妻をイメージして書かれたのではないかともいわれるこの詞について、そして曲作り、それをみごとに歌い上げ、完成にたどりついたフランク永井の歌唱について触れている貴重な記述があるのでその箇所を紹介したい。

 歌のヒットの経路ぱ非常に面白いものがある。いまのようなマス・セールで、テレビを中心とした媒体にとにかく露出させて、ほとんど押しつけるような形でヒットに仕立てていくやり方というのは、何とも味わいがないように思えてならない・本来のヒット・ソングというものは無理のない形で、ということは、自然に大衆が好んでいく歌のことをいうのではないか、といまでも思っている。作られたヒットではない大衆との。「情」の通い合うヒットこそいま求められているものなのでぱないか、と考えることもある。
 フランク永井に作った「おまえに」という歌がある。詞は岩谷時子さんで、四十一年十一月に出した歌だ。しかもA面の「大阪ろまん」のB面で出したものだった。
 〽そばにいてくれるだけでいい......淡々とした語り口で、男の心を素直に出した詞だった。
 曲もこの詞に合わせるように、言葉を活かして語りかけるような形に作った。
 どちらかといえば、地味な歌でいわゆる派手に大ヒットするといった華やかさはない歌だった。それが、いつの間にか歌われ始めてリクエストも多かった。ことに、フランク永井君がナイト・クラブなどで歌うと、必ずといっていいほどアンコールされる。しみじみ歌いかける彼の唱法の良さが充分に発揮されたわけだが、あまりのリクエストの多さに、四十七年九月にはこんどはA面にして再発売した。こういったケースは全く珍らしい。というのも、この歌の味わいを、フランク永井君がじっくり歌い上げたからだったのだろう。良い歌ダつ必ず大衆よ支持してくれる、という一つのサンプルといってもいい。
 それにしても、このような語りかける歌というものは表現が非常に難かしい。感情表出を誇張すると嫌や味になるし、感情を伝えることが出来ないと味も素っ気もないものになってしまう。
 例えば「おまえ」という言葉一つをとってみても、聴く人の心をその言葉だけで、惹きつけなければならない。感情を押しつけてもいけないし、また、感情を殺しても聴く側に心が伝わらない。抑制の利いた感情移入が必要となるのである。おそらくいまの歌手で、こういった語りかけを巧みに行えるのは、フランク永井君と石原裕次郎君ぐらいではないだろうか。
 共に、男っぽさを持っているし、優しい言葉の響きを伝えられる歌手である。その根底にあるのは俗にいう「テレ」といえる質の感覚である。これをさらにつきつめていくと、男のハニカミといったような感情を持ち合わせる、と思ったりもする。こういった質の感情、感覚は、いまの時代にだんだん少なくなってきている。多くは感情の誇張こそ表現だと考えているようなタイプになってしまっている。
 「おまえに」が、たとえ一部からでも強い支持を受けているのは、男の本来の意味での優しさが表現されたからだったと思っている。やはり歌は心の表現なのである。(吉田正)

出典:演歌大全集~演歌-その魅力のすべてより。㈱ほるぷレコードの企画で全盛の歌謡曲時代、レコード会社のトップビクターとコロンビアから20枚LPを出すことに成功したとき、豪華な解説書を添付した。その中の一文(一部)である。

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このページは、文四郎が2013年10月27日 12:55に書いたブログ記事です。

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