
「フランク永井展」が開催中である。3月末まで、フランク永井の恩師であった吉田正、彼のふるさと茨城にある吉田正音楽記念館で行われている。今回のフランク永井展はおそらく、今までにない規模のものとなっているので、ファンの方はぜひとも訪問されてはいかがと思う。
フランク永井写真展というのは過去にも何回か開かれている。今回は吉田正記念館の全館を使って豊富な遺品や写真を展示している。
3~4Fでは吉田正とフランク永井が得たビクターヒット賞のニッパー犬の記念像が所せましと並べられている。二人合わせたらおそらく数百点に及ぶと思える。吉田正のは200~300はあるであろうしフランク永井のもおよそ50。いかにこの二人(橋幸夫とか他の吉田門下生のをあわせたら恐ろしい数になるのだが。。。)で、昭和30~40年代を飾ってきたかの証である。
曲も楽しめ、映像も見ることができる。「名曲誕生エピソード」とか「NHK紅白出場の記録」とかのコーナーも設けられている。
1階のショップでは「開催記念コーナー」があり、関係した商品が購入できる。拙著「フランク永井魅惑の低音のすべて~昭和歌謡を開いた栄光の全記録」もそろえられている。先に復刻されてMEG-CDによって懐かしいジャケットもついたCDが購入できる。吉田正の作品は積極的に復刻リストにあり、吉田正の作曲した曲としてもここでは200枚以上はそろえられると思える。
吉田正音楽記念館の楽しみは5階の「展望カフェ」である。ここはなんといっても、高台名所かみね公園からの圧倒的な景色の展望である。広大な太平洋の広がりを見渡しながらのカフェでのひといきは、すばらしいひと時を実感させてくれる。
なお、ここでは「初日の出ビュー」という元旦の催しを恒例にして人気を博している。この展望台から初日の出をみようというのだから、贅沢極まりない。この申し込みは明日までなので、この案内は今度の新年はには役立たないだろうが、1年後に日程の都合がつく方はトライしてみてはいかがだろうか。

この素晴らしい吉田正音楽記念館をあとに、足を太平洋海岸ぞえに北上してみるとイイかも知れない。311の爪痕が垣間見える。311は宮城と福島の被害が大きく取り上げられ、茨城や千葉の被害はおおきかったにもかかわらず、隠れてしまっている。現地の被害にあった方々の話では、あの地震は実は5連発だったのだという。震源地では3連発といわれるが、茨城沖であとの2発が連続的に発生していて、津波をもろに受けたと。実際に北に向かう国道と並行して山側を走る常磐線の線路を超えて波が襲撃している。辺りの屋屋の1階は全滅している。襲ってくる津波の壁をみて上に逃げ惑ったのだと。
県境を超えると福島県のいわき市だ。ここのアクアマリンですらやられたのだが、その映像や写真は無数、いたるところで今も流され生々しく恐ろしさをいまも訪れる人の記憶をよみがえらせる。
少し手前に戻す。北茨城市磯原に日本を代表する童謡詩人の野口雨情の生家、記念館がある。ここもぜひ一度は訪れてみたいところである。当然のこのあたり一帯が被災しほぼ1年は打撃の大きさにうちひしがれ、休業。今は旅館も含めて多くは再開している。負けていてはならないという強い思いが皆の心に復興してきた結果である。

さて、野口雨情は童謡作家である。日本人のこどもの視線での情景をこれほど見事に表現した人はいないと思うのだが、誰でも口ずさんだ彼の作詞の歌をフランク永井は多く歌っている。代表的には2枚のLPがでている。
ひとつは、1966(S41)年の「あなたに贈る幼き日の歌」(SJV-215)で野口雨情の詩のものを多く歌っている。「あの町この町」「七つの子」「赤い靴」がおさめられている。もう一つは1974(S49)年「いにち短し恋せよ少女(おとめ)」(SJX-170)で「波浮の港」「船頭小唄」「旅人のうた」といった大人を対象にした日本の名曲を中心に歌ったものである。
いずれもフランク永井の大人の恋の歌・都会の歌というイメージに沿ったものでないだけにレアな作品になっているので、入手は比較的むずかしい。CD化されているのも少ないのが残念である。聴いてみるとフランク永井は丁寧に、素直に、しかも野口雨情、彼の曲の多くを作曲した中山晋平らすぐれた先輩がたへの敬意をこめてうたっているのを感じる作品になっている。中山晋平についてはフランク永井の恩師吉田正が師事し大変尊敬していたとうエピソードは有名である。
野口雨情について最近にすばらしい著作ができた。「郷愁と童心の詩人・野口雨情伝」(講談社)である。野口雨情のお孫さんにあたり、今も生家をまもっておられる野口不二子さんがまとめられたものだ。雨情がなぜ、どうしてあのようなみごとな詩を書き遺したのか、この秘密が過酷な彼の人生の描写と共に明かされている。
「童心」で思い浮かぶ。フランク永井は話に夢中になり笑うときに、その笑顔は子供のように屈託のない破顔を見せた。人にとって大切なものが底辺で何かつながっているのかもしれないと思い起こされた。
(初:2012年12月15日1238)
(初:2013年01月13日1402)
キーワード:フランク永井,吉田正音楽記念館,フランク永井展,野口雨情
イイネ!(8)
コメント
DIS 2012年12月18日 19:58
私も何かの情報でこの素晴らしい企画展を知りました。
ぜひ何があっても、一度は訪れようと思っています。
きっと1日中、フランク永井さんに浸っているんだろうな。
コメント
文四郎 2012年12月20日 20:18
吉田正音楽記念館は絶やさずにさまざまな企画の催しをしているのですが、それだけに吉田正の功績は大きかったのですね。今も健在の門下生を中心とした写真展や、コンサートや、音楽会、トークと。。。。アイテムとしてはフランク永井も欠かせない。
稼いだ資産をこのように利用し活かしていることに、遺訓の立派さがあると思います。
コメント
DIS 2013年01月14日 18:49
先週の平日に休みをもらって行ってきました「フランク永井企画展」。
往復4時間の運転でしたが、期待に胸を膨らませて苦にはならなかった。館内を三時間もかけてゆっくりと堪能してきましたが、ビデオ映像がそんなに貴重だったとは。うーん、今となっては見てこなかったことに後悔。
でも展示物では「公園の手品師」のレコードジャケット撮影で身につけたジャケットや年賀葉書が飾られていましたね。人柄を映す文字の字体に愛着を覚えました。
やっぱりフランク永井は歌声も人柄も最高です、見習う点が沢山ありますね。
コメント
文四郎 2013年01月15日 19:22
お疲れ様でした。ちゃんと先にビデオのこと触れればよかったですね。すみませんでした。次回の楽しみにして。。。。
私も時間もかけて展示品の一つ一つを吟味して見たかったのですけど、なかなかそうはいきませんでした。